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pic業界を知る2023年5月30日

プラスチックを生業とする私たちが考える 実現可能な“脱プラスチック”とは?

世界的な“脱プラスチック”の潮流のなか、長年プラスチックを専門として扱っている三井物産プラスチックは、この問題とどう向き合っているのでしょうか。 近年注目が高まっている、お米を原料としたバイオマスプラスチック「ライスレジン」を販売する当社のバイオ樹脂ユニットに、話を聞きました。

「ライスレジン」をきっかけに注目されたバイオマスプラスチック

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―まず、様々なメディアで取り上げられている「ライスレジン」について教えてください。

古賀:ライスレジンは非食米を原料とした国産バイオマスプラスチックです。お米には様々な種類があり、中には食用に適さないものもあります。たとえば、食用に適さない古米、米菓メーカーほかで生じる破砕米など、それらは飼料としても処理されず廃棄されてしまうのですが、独自の技術でプラスチックとして使用できるようにしたものが、ライスレジンです。 これまでバイオマスプラスチックの多くは海外のトウモロコシやサトウキビなどの植物を原料に作られていましたが、ライスレジンは国産のお米を使用することで、CO2排出量の削減に貢献できるだけでなく、日本の耕作放棄地の問題解決などにも寄与することができる点が特徴です。

―国産の非食用米を活用することが、なぜ耕作放棄地の問題解決につながるのでしょうか。

古賀:あまり知られていないのですが、実はお米を作る水田は、1~2シーズン稲作をしないと、数年間はお米作りができない土地になってしまうのです。一度休耕地にしてしまうと、いざお米を増産しようとしても、すぐに作ることはできないということです。そのため、ライスレジンの原料である非食用米の生産で水田を活用することは、日本の農業問題の解決に大切な役割を担っているのです。

―ライスレジンを採用されるお客様は、どのようなお客様が多いのでしょうか。

古賀:ライスレジンを扱い始めた当初は、国産のバイオマスプラスチックであることを評価してくださったお客様が多かったですね。それから現在、国内でライスレジンを生産しているのが新潟の南魚沼、熊本、福島の3か所なので、ライスレジンを通じて、日本の社会・経済課題である耕作放棄地の解消に貢献したい、という思いで採用してくださったお客様もいらっしゃいました。 フィルムのみならず、射出成型をはじめ、ブロー成型や押出成型など、様々な成型方法での検討事例が広がってきたことも、より多くのお客様からのお問い合わせにつながっています。 また、CSRの一環として採用くださる企業様には、バイオマス率が数値化できる点も評価いただいています。海外のものだと数値化されているものは少ないのが現状です。

一方で、最近は少し変化がありまして、海外からのお問い合わせが増えてきました。今年の2月にUNIDO※のイベントでライスレジンをご紹介したのですが、それがメディアでも取り上げられ、様々な国のお客様からお声がけいただくようになっています。欧米の企業でも廃棄米に関心があるようで、直帰ではこの3月に、BMW Japanのショッパーにライスレジンが採用されました。

※国際連合工業開発機関。産業開発を通じて開発途上国・新興国の経済発展を支援する国連の専門機関。

環境問題の解決と利便性を同時に追求する「バイオ樹脂ユニット」発足

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―ライスレジンを始め、バイオマスプラスチックに注力する理由を教えてください。

古賀:ライスレジンをきっかけにバイオマスプラスチックが注目されていますが、実はバイオマスプラスチックは、「バイオプラスチック」の一つに過ぎません。バイオプラスチックには様々な種類がありますので、課題や目的に合わせてご提案する体制を目指し、2019年にCO2削減やプラスチックごみの削減につながる環境素材製品を扱う組織として、「バイオ樹脂ユニット」が発足されました。

―「バイオ樹脂ユニット」で扱う環境素材製品とは、どのようなものでしょうか。

古賀:バイオプラスチックには、ライスレジンなどをはじめとするバイオマスプラスチックや、自然に分解される生分解性プラスチックがあります。また、環境素材としてはリサイクル原料を使用したプラスチックもあり、それぞれ用途によって適性があります。バイオ樹脂ユニット発足当初は、台湾の生分解性プラスチック加工業者であるMINIMA TECHNOLOGY社に出資したこともあり、まずは生分解性プラスチックの展開から取り組みをスタートしました。一方で環境素材にはそれ以外にもたくさんの選択肢があり、お客様によって希望される解決手段がそれぞれ異なるため、当ユニットも多様な環境素材を扱うことでお客様のニーズに対応できるようにしています。

私たちが考える実現可能な“脱プラスチック”への道

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―近年の“脱プラスチック”の流れのなかで、プラスチックを専門に扱う商社として、どのようなビジョンを描いているのでしょうか。

古賀:日本のプラスチック資源環境戦略では、2030年までにバイオマスプラスチックを200万トン導入するという目標を設定しています。残り7年で達成するには、簡単な目標ではないと思っています。石油由来のプラスチックの利便性を踏まえると、現代社会はバイオマスプラスチックだけでは成り立たないのが現実です。 しかし一方で、石油由来の資源の使用比率をいかにして削減させていくかを考えることは、環境問題を解決するためには不可欠です。社会の維持と環境問題への取り組みのバランスにおいて、その時々で最適な選択をしていく必要があり、その積み重ねが現実的な“脱プラスチック”の実現の一つの在り方ではないかと考えています。 そこで私たちができることは、プラスチック資源循環戦略で掲げられている「リユース・リサイクル・リデュース」において、それぞれが持つ課題に対して適切なソリューションを提供することであると考えています。それもできる限り幅広く、多様な面からアプローチできる可能性を、一つでも多く持っておくことが重要です。それは長年プラスチックを扱ってきた当社だからこそできることだと自負しています。

―ではバイオ樹脂ユニットとして、今後はどのような取り組みをしていく予定でしょうか。

古賀:まだまだ日本ではバイオプラスチックの広がりはこれからなので、どのような製品がどのような課題を解決できるのかを、認知していただくための活動が必要だと考えています。 また、私たちは多様な業界の方々とつながりがあるため、現在の環境素材が抱える課題へアプローチすることもできると考えています。例えば、プラスチックのリサイクルは普及していますが、牛乳のようににおいの強い食品の容器を再度ペレット化すると、どうしても臭気が残ります。そこで、リサイクルペレットを脱臭できる技術を持った機械メーカーさんと組むことで付加価値を持たせ、さらにリサイクルを促進することも可能になります。 そういったスキームをつくることで環境問題の解決へ貢献するのも、当社の使命であると考えています。現在様々な計画が進行中なので、これからどんどん発信していく予定です。

PROFILE
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古賀 晋一
三井物産プラスチック株式会社 産業材料本部 バイオ樹脂ユニット長
1999年入社。ポリエチレン、ポリプロピレンをはじめとする各種合成樹脂原料、包装・物流・農業生産資材などの合成樹脂製品、硫酸・過酸化水素などの無機化学品原料を経験。本店、北海道支店、三井物産(香港)有限公司、四国支店などの勤務を経て、2019年10月1日付で新設されたバイオ樹脂ユニットにて、来たる脱炭素社会の実現に向けたバイオマス、リサイクル、生分解の各種材料・製品分野の取組に従事。

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