業界を知る2022年10月19日
「バイオプラスチック」とは?
~間違えやすいバイオプラスチックの意味~
プラスチックは、自動車、スマートフォン、食品包材、住宅建材、農業資材といった幅広い産業分野で使用されている材料で、私たちの日常生活においてなくてはならないものです。身近なところでは、容器や日用品、また合成繊維として衣類などに利用されており、あらゆる場面で私たちの生活を便利にしてくれています。しかしプラスチックは石油を材料としており、有限な化石資源を使用しています。生産時や廃棄時における環境への負荷も近年懸念されています。こうした状況下、代替素材として注目されているのが「バイオプラスチック」です。
間違えやすいバイオマスプラスチックの意味 バイオマスプラスチックとは?
「バイオプラスチック」の定義
まず、 「バイオプラスチック」は植物由来の資源(バイオマス)を原料とする「バイオマスプラスチック」と微生物等の働きで最終的に二酸化炭素と水に分解されるする「生分解性プラスチック」の総称です。 但し、植物由来であるからといって生分解性があるとは限りませんし、石油由来でも生分解性をもつものもあります。その為、「バイオプラスチック」という言葉だけでは誤解を招くことがあります。 日本バイオプラスチック協会のホームページでは、原料がバイオマスであるプラスチックは、「バイオマスプラスチック」と表記され、生分解性を持つプラスチックは「生分解性プラスチック」と分けて表記されています。また、海外ではバイオマス由来のプラスチックを「bio-based plastic(バイオベース プラスチック)」と呼ぶことから、生分解性プラスチックと明確に区別するために「バイオマス起源プラスチック」あるいは「バイオ起源プラスチック」、「植物由来プラスチック」と呼ぶこともあります。 「バイオプラスチック」とお話される場合は、どちらの意味なのか、もしくは両方の総称で話しているのか、注意しましょう。
バイオプラスチックの分類
バイオマスプラスチック | 生分解性プラスチック |
---|---|
バイオPE(ポリエチレン) | PLA(ポリ乳酸) |
バイオPA(ナイロン) | PBS(ポリブチレンサクシネート) |
PEF(ポリエチレンフラノエート) | PBAT(ポリブチレンアジペートテレフタレート) |
バイオPET | PHBH |
天然物とのコンパウンド 等 | PCL(ポリカプロラクトン) 等 |
「バイオプラスチック」にはさまざまな種類があり、使用用途やバイオプラスチックを使用する目的に合わせて適切な選択をする必要があります。
「バイオマスプラスチック」とは
バイオマスプラスチックとは、有機資源バイオマスを一部もしくはすべての原料として使用しているプラスチックです。原料の種類等は多岐にわたりますが、バイオマスプラスチックはバイオマス資源のみを原料としたものだけでなく、バイオマス資源と石油由来のプラスチックからなる複合材も含み、非食用米や卵殻等の天然物とのコンパウンドもその一つです。 バイオマスプラスチックは従来のプラスチックに比べて環境への負荷が低く、SDGsなどにより環境保全への意識が高まったこと影響もあり、従来のプラスチックに代わるものとして注目を集めています。日本においても、プラスチック資源循環促進法により「バイオプラスチック導入ロードマップ」が策定設定され、2030年までに約200万トンのバイオマスプラスチックの導入目標が設定されています。
「生分解性プラスチック」とは
生分解性プラスチックとは、自然界に存在する微生物の力で水と二酸化炭素に分解されるプラスチックです。太陽の光や熱による酸化分解促進反応を利用し、自然環境での酸化崩壊する、酸化型分解性樹脂(OXO degradable plastic)とは異なります。酸化型分解性樹脂は酸化分解促進剤の注入による自然環境での酸化崩壊の時点で微粒子状にバラバラに分解された後、マイクロプラスチック化するリスクがあるという懸念から欧州を中心に使用禁止されていますので、注意しましょう。 日本バイオプラスチックグリーンプラ協会が発行している生分解性プラマークは、生分解性プラスチックの生分解度を国際的に規定された試験方法と定められた基準により審査し、さらに重金属等の含有物、分解過程(分解中間物)での安全性などの基準をクリアした製品だけが、生分解性プラマークをつけることができます。生分解性プラスチックは農業用マルチフィルム、使い捨ての食品容器やカトラリー、ストローなどでも採用が拡がっています。
まとめ
今後の利用促進が期待されるバイオマスプラスチック
バイオマスプラスチックはバイオプラスチックの一種で、有機資源を材料に使用したプラスチックを意味します。従来の石油原料のプラスチックの環境負荷を軽減する素材として注目を集めており、プラスチック資源循環戦略のもと、バイオマスプラスチックの使用量を増やす取り組みが行われています。有機資源を使用したバイオマスプラスチックは、トウモロコシやサトウキビ、非食用米や木、卵殻などのバイオマス有機資源を原料に作られ、製造工程における温室効果ガスの削減の他、石油資源消費量の削減などの効果が見込めます。