トピックス2025年2月28日
製造業の調達・購買を3PL企業に外注するメリットとは?
SCMについて徹底解説

現代のビジネス環境は、グローバル化や技術革新により急速に変化しています。その中で、企業が競争力を維持し、成長を遂げるためには、効率的なSCM(サプライチェーン・マネジメント)が欠かせません。しかし、サプライチェーンの最適化には多くのリソースと専門知識が求められ、特に中小企業にとっては大きな負担となるケースも多いです。
こうした課題に対する解決策の一つとして、SCMの外注化が注目されています。そこで本記事では、三井物産プラスチックでクライアント企業へのSCM支援を担当しているメンバーを集め、座談会を実施。サプライチェーン・マネジメントを外注することによる具体的なメリットや、パートナー選びのポイントなどについて語りました。
なぜいまサプライチェーン・マネジメントが重要なのか?
―今回は三井物産プラスチックでSCM(サプライチェーン・マネジメント)を担当するメンバーに集まっていただき、近年ニーズが高まっているSCMの外注化について詳しくお話しを聞きたいと思います。まず基本的な情報として、三井物産プラスチックで受託しているSCMはどんな業務になりますか?
平:SCMというのは、クライアント様の物流機能全体を当社でお抱えして、改善や改革をしながら効率よく回し、ジャストインタイムでお客様のところへ製品を届けるという業務になります。SCMの代わりに 3PL(サードパーティー・ロジスティクス)と呼ばれることもあります。
神保:本来「サプライチェーン・マネジメント」という言葉は、原材料の調達・購買から最終的に消費者に商品が届くところまでのサプライチェーン(供給網)を管理する手法のことでしたが、それが物流に特化して使われるようになり、需要予測や生産計画、原材料の調達・購買などを包括的に意味する言葉になっています。在庫管理や受発注なども含め、サプライヤーとタイムリーにやりとりして、きちんと納期に応じてもらうよう調整するのが主な業務になります。
3PL(サードパーティー・ロジスティクス)
荷主企業に代わり、最も効率的な物流戦略の企画立案や物流システムの構築の提案を行い、かつそれを包括的に受託し、実行すること。荷主でもなく運送事業者でもない、第三者(サードパーティー)として、アウトソーシング化の流れの中で物流部門を代行し、高度の物流サービスを提供する。国土交通省では、新たな物流サービスである3PLの普及による物流効率化が地球温暖化問題への対応(CO2排出量の削減)や、地域雇用の創出等の効果につながるとし推進している。
―なぜ自社でSCMを行わず、3PL企業へ外注するのでしょうか?どんな理由でお客様が外注を検討することが多いのか、教えてください。
神保:例えば製造業では、工場の担当者が一人一つのベンダーを追いかけて、調達から納品まで全部見るというやり方をしているパターンが多いと思います。その業務を外部委託したり、集約したりすることで、その方たちの手が空いて、本来の業務に集中できるようになりますよね。専門外の調達業務ではなく、製造業の知識をつけたり技術を磨くことに専念できるわけです。最近はそういう流れでご相談いただくことが多いな、という印象です。
田島:よく サプライチェーン・マネジメントの醍醐味と言われるのは、「全体の最適化」ですね。例えば製造業の企業では、各部署で調達業務などを行うことも多くて、それぞれ同じようなことをやっていても、外部環境が違ったり商流が違ったりすると、変動要素が多いんですね。いろんなことが全然安定してないわけです。でも企業としては、それにどうアプローチしていくかが、生産性やコストに大きく影響します。そのため、それぞれの部門や製品ごとに細かく見ていくのももちろん重要ですが、全体を見てうまく回していくことも非常に重要になります。それを専門家に任せることができれば、効率よく最適化できる。それがSCMを外注化する醍醐味になっているかと思います。
―企業には調達・購買部門があることも多いですが、そこでSCMを行うこともできますよね?
平:調達・購買部門が成熟している企業は、もちろん社内でうまく運営できていると思います。ただ、製造業のような職人気質の企業はモノづくりに特化していることも多く、例え長い歴史を持つ大企業であっても、必ずしもSCMが得意というわけではないんです。しかも、近年のグローバル化で国際的な知見も必要になっていますし、ビジネスはますます複雑化しています。社内の情報だけでなく、自社を取り巻く環境も分析する必要がありますから、広いネットワークから情報収集する必要がある。そこで、商社である我々にお声がかかるというわけです。
神保:それから、最近は当社のSCMの取り組みについて、BCP対策として問い合わせいただくことが増えていますね。近年の世界情勢を踏まえて、製造に支障が生じないように、また製品の安定供給のために、原料のセカンドソースへのニーズが高まっているように感じます。製造の安定化やリスクマネジメントとして、SCMの外注化を検討する企業が増えているのかもしれません。我々商社はサプライヤーのセカンドソースを探すという点ではまさに得意分野ですので、そのあたりでもお力になれると思います。
BCP(事業継続計画)
企業が自然災害、大火災、テロ攻撃などの緊急事態に遭遇した場合において、事業資産の損害を最小限にとどめつつ、中核となる事業の継続あるいは早期復旧を可能とするために、平常時に行うべき活動や緊急時における事業継続のための方法、手段などを取り決めておくこと。
SCMの外注化で委託できる具体的な業務とは?
―SCMの業務範囲は非常に広く多岐に渡るようですが、具体的にはどのような業務を受託することが多いのでしょうか。
平:クライアント様によって違いはあります。SCMの一部の業務を切り出して依頼される場合もありますが、多くはまるっと全部お引き受けすることが多いですね。具体的には、まずは需要予測。FCST、フォーキャストと呼んだりもしますが、いろいろな情報からどれだけの需要が発生するかを予測し、生産計画の参考となる数値を提示頂きます。それがないと、どれだけ製品が必要なのか、どれだけ在庫を持っておくとよいかなどが決められないので。もちろんその予測がぴったり当たるかどうかは、実際やってみないとわからないこともあります。その点、我々には三井物産グループのネットワークがあるため、あらゆる業界の動向が把握できます。それらをもとに参考となる情報を共有して、クライアント様に進言する。ただ、このためにはある程度クライアント様の情報も提供いただく必要がありますね。その情報をもとに顧客アセットを活用して答え合わせをする必要があるので。もちろん社外に顧客情報が流出することはないですが、どこまで信頼関係を築けるかが肝になります。
―なるほど、需要予測は確かに商社ならではの価値が発揮できる分野ですね。それ以外の業務については、いかがでしょうか。
斎藤:やはり一番のミッションは、お客様のラインをストップさせないことですね。私は前の部署で中国にある工場の調達業務をやっていたのですが、その頃からこれは死守しています。ラインをストップさせないために、何時何分にどこから飛行機が飛んで、いつ着いて工場に入るか、そこからどういう風に生産して出荷させるかを細かく把握して調整する。そのための土台をしっかり整えて、いかに協議し調達していくか。非常に細かい調整が必要なので、社内だけで行うのはかなり負担になると思います。そこをサポートするのも、我々の役割ですね。
平:製造業で扱う部品は、数千点になるのが普通です。それらを各担当が1個1個、いつ、どの部品が入って…というのを日々調整しながら進めているので、ラインが止まらずに製造できる。やっぱりその部分は、クライアント様から評価をいただいているところですね。
斎藤:それから多くの企業で抱えているのが、在庫管理の問題です。先ほどの需要予測とセットになりますが、在庫分析というのはバランスシートの観点からもすごく大事です。いかにデッドストックを少なくするか、購入量をどうコントロールするかは、非常に難しい。
田島:在庫管理については、クライアント様も本当はやらなきゃいけないことなんだけど、人がいなかったり時間がなかったりで、なかなかできていないケースが多いようなんですね。それを全部、こちらで分析してコントロールするので、「とても助かっている」と言っていただけることが多いです。
平:分析や提言などのコンサルタントとしての側面もありますが、実際はもっと泥臭く、とにかく細かい調整を重ねる業務が多い。 売って終わりじゃなくて、 売った後どうだったか、次に売るために納期をどうするか・・・その繰り返しです。不具合品があったら、すぐ対応することももちろん我々の仕事。柔軟に対応できる経験とノウハウが求められます。それから、なんといっても交渉力ですね。メーカーさんだけでは難しい国内外の交渉も、商社ならではの知見からうまく進めることができる。当社にお任せいただければ、いろんな場面で役に立つと自負しています。
「中核業務に集中してほしい」それが我々の願い
―SCMに関わるみなさんは、日々の業務でどんなことを大切にしているのでしょうか。
神保:我々がSCMを行う上での使命は、 クライアント様の生産性を徹底的に向上させる手伝いをすることだと思っています。そのためには需要予測に基づいてしっかり材料手配するのは当たり前で、そのうえでどれだけ中に入り込めるか、どれだけ情報の壁をなくせるか、が勝負どころです。例えば「Aというお客様からこれだけ発注が入ってきそうだ」というところまでリアルに情報を共有いただければ、我々もものすごくイメージが膨らんで、より一体的に仕事ができるんです。つまりいかに信頼関係を構築できるかが、サービスの品質に直結するわけです。「この人にひとこと言えば十分かってくれる」みたいな、外部委託はしてるものの、あたかも机を並べて一緒に仕事をしているかのように思ってもらうこと。それがこの仕事をするうえで、とても大切な要素だと思っています。
平:調達に困るときって、やっぱり事業が伸びていくときが多いんです。どんどん製造したいし、その力も資金力もある。でもどうやって調達先を探せばよいか、どうやって在庫を最適化すればよいかわからない。海外のメーカーは自分たちではグリップが効かないですしね。でも調達で足を止めていると、競合他社に追い抜かれてしまうという危機感もある。そういうときにご相談いただくケースが多いので、我々としては「代行」しているだけではなくて、「その企業様がこれから成長していくのをサポートしている」という意識で業務に当たっていますね。
神保: そういう意味では、部品点数が多い企業や、調達先が多い企業は、SCMの外注化を検討してもいいのかなと思いますね。あとは調達経路が複雑だったりとか。そういうケースは、自社だけでやりきろうとすると、なかなか大変なことが多いので。
平:そうですね。だから必然的に、精密機器、電子機器、モーターなどの製造業からご相談いただくケースが多い。機械関係は複雑で、部品も数千点、ねじ1本まで含めると数万点という規模の製造になりますので。
田島:お客様としては、自社でやろうと思えばやれることではあるんですよね。ただ、やっぱり効率とかコストとかを考えると、外部委託できるならしたい。ただ、実際に外部委託することでどれだけの効果があるのかは、やってみないとわからないところもあります。なので、まずはお困りごとをおおまかにお伺いし、どんなことができるかを一緒に考えさせていただくのがいいのかな、と思っています。私たちが持つ事例をもとに、参考になるお話をさせていただくこともできますし。
平:企業には、やっぱり得意・不得意があると思うんです。得意なところは得意なところでどんどん伸ばしてもらいたいし、そうじゃない部分については、我々の方で引き取ってやります、と。我々はいろんな企業様から任せていただいているので、そういったノウハウが蓄積されている。当社に任していただいた方が合理的だと思っていただけるといいですね。「中核事業に集中して事業を伸ばしていただきたい」それが我々の一番の願いです。
SCMを外注するなら3PLパートナーの選定を慎重に
―これからSCMを外注化しようと考えている企業へ、アドバイスをお願いします。
田島:私自身、物流出身なので、調達に関する業務の大変さは重々理解していると思っています。この仕事は細かくないとできない仕事である一方で、全体も見なければならず、かつ多くのベンダー様ともしっかりコミュニケーションをとれる力も必須です。そのため、そういう人材が自社の担当者として入ってくれるかどうかというのが、委託の成否のポイントになると思います。これから外部委託を検討されているなら、そういう人材がいるのかというのを重視して選ばれると良いのではないでしょうか。
平:確かにどんな人材がいるのかは、きちんと見極める必要がありますね。それから、委託する3PL企業の規模感も、非常に大事な要素になります。特に日系の企業さんは長く安定的に供給してもらうというのが最重要になるので、そのためにクッションとなって、バッファーを持ちながら必要な分だけ供給することができる委託先を選ぶ必要があります。やはり需要にはアップダウンが付き物なので、不測の事態が起こることもあるんですね。もう何ヶ月も前から仕込んでいる原材料が入ってきちゃうのに、急にシュリンクしたり。弊社の場合は、一時的に在庫して止めておくこともできますが、そういうバッファ―となれる規模感の会社はそう多くないと思います。本当に、コロナ禍ではサプライチェーンがめちゃくちゃになることもあって、リードタイムが1〜2年なんていう部品も出てきた。そういうときに頼れる存在かどうか、ぜひ見極めていただきたいです。委託先の規模感が大きければ、自社で物流のプラットフォームを持たない企業様でも、委託先のプラットフォームを活用する手があります。ちなみに当社は独自のネットワークがあるので、ゼロから物流プラットフォームを構築する必要はありません。その点も、ぜひご相談いただきたいですね。
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神保 貴則 (じんぼ たかのり)
三井物産プラスチック株式会社
営業第3部門先端・情報電子ソリューション事業部 事業部長
三井物産株式会社入社後、一貫してエレクトロニクス業界(半導体製造設備、液晶パネル、電子材料等)でのトレーディングに従事。5年半の台湾駐在を経て23年4月当社着任、現職。SCM事業拡大に加え、半導体、回路基板材料を中心とした電子材料のグローバル展開を担う。

平 将行 (たいら まさゆき)
三井物産プラスチック株式会社
営業第3部門先端・情報電子ソリューション事業部 SCM事業グループ グループリーダー
2007年に三井物産フロンティア株式会社(松本支店)入社。入社以来、一貫してSCM業務及び調達代行業務全般に従事、2014年三井物産フロンティア株式会社と当社が合併。2014年より本店の勤務を経て、現職。 現在は、SCM事業グループをリーダーとして牽引。

齋藤 繁孝 (さいとう しげたか)
三井物産プラスチック株式会社
営業第3部門先端・情報電子ソリューション事業部 SCM事業グループ
2008年、三井物産フロンティア中国入社、入社後11年間中国東莞にある工場にて生産管理、調達業務に従事。
2019年三井物産プラスチック入社後、光学フィルムの販売、2022年からSCM業務に従事。中国で培った調達業務のノウハウを活かしながら、お客様のラインダウンを回避するように日々奮闘中!

田島 あおい (たじま あおい)
三井物産プラスチック株式会社
営業第3部門先端・情報電子ソリューション事業部 SCM事業グループ
2024年、三井物産プラスチック入社。現在は半導体製造装置分野でのパーツ調達代行、SCMに従事。
前職では国際物流会社にて10年間フォワーディング業務に従事。アジア向け海上冷蔵混載サービス開発、新規営業倉庫立ち上げ等の経験を経て、現職。
流動性が高い状況下でも最適なSCMサービスをお客様にお届けしたいという思いで日々奮闘中!