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    シリコーンシーリング材という選択(前編)

pic素材を知る2024年6月19日

ライフサイクルコスト低減をかなえる
シリコーンシーリング材という選択(前編)

2023年秋、東京国際展示場にて高速道路事業や高速道路を支える最先端技術の展示会「ハイウェイテクノフェア2023」が開催されました。この展示会に、素材・化学品メーカーであるダウ・東レ株式会社(以下、ダウ・東レ)の総合代理店として三井物産プラスチックがブースを出展。展示会の来場者である土木業界の方々に向け、今後のインフラ保全に最適な新材料“シリコーンシーリング材”のPR活動を行いました。イベントの様子をレポートするとともに、ハイウェイテクノフェア出展の狙いはどこにあるのか?前後編に分けてお届けします。

シリコーンシーリング材の特長とは

いま国を挙げての取り組みとなっているのが、インフラの長寿命化、持続可能なインフラメンテナンスの仕組みづくりです。高速道路や橋梁などの躯体は40年もつと言われていますが、土木業界で定番となっているシーリング材の耐久性は約5〜10年ほど。つまり躯体ではなく、隙間に充填するシーリング材の寿命不足のほうが懸念されているのです。そんな中、今回のイベントで出展された製品は、ワーキングジョイント部に最適な土木用シリコーンシーリング材 DOWSIL™ SE990 INFRA、そして伸縮装置向けのDOWSIL™ 902 RCS Joint Sealantなど。土木業界で一般的な有機系シーリング材に比べ、いずれも「寿命が5倍超」と言われるシリコーンシーリング材です。耐久性・耐候性の高さが特長で、その寿命は50〜60年相当*。建築業界ではメンテナンスフリーのシーリング材として認知されており、日本国内での実績も多数存在します。自社製品の施工実績について、ダウ・東レの伊藤さんにお話を聞きました。

「ダウ・東レは、ダウグループの一員で、グローバルでは約80年にわたりシリコーン業界をリードしてきたダウのシリコーン事業部の日本法人です。ダウのシリコーンシーリング材は、海外も含めて様々な建物に使用されています。例えば、ガラスの外装パネルをシーリング材だけで固定するSSG構法のビル。ガラス張りで、絶え間なく紫外線が当たり続ける環境でありながら、海外では約50年間ノーメンテという実績もあります。国内のSSG構法だと、銀座・数寄屋橋の東急プラザ銀座がそれにあたります。あの建物は、まさにダウのシリコーンシーリング材を使って建てられたのですよ」

東急プラザ銀座は、江戸切子(きりこ)をモチーフにした立体的なガラスの外装デザインが話題の商業ビル。また、米国では50年を超える実績も存在するとのこと。

「シカゴ近郊のとあるSSG構法のビルは50数年経過していますが、シリコーン自体は全く問題がなく、落下防止のためにつけられた補助材が先に落ちてしまっているような状況。建築業界で使用されているシリコーンシーリング材のSSG構法は、完成度の高い技術で、前述の様々な建物の実績から高い耐久性を有していることをお客様にはお伝えしています」

*ダウ・東レ製品と他社品の耐候性試験結果の比較等に基づいて期待できる寿命

10年経っても初期の柔軟性・追従性を維持

ダウ・東レでは、実際に10,000時間のキセノン耐候性試験によって変成シリコーン素材とシリコーン素材の経年劣化を比較しており、製品データとして画像を公開しています。

「写真を見てもらうとわかるのですが、変成シリコーンは経年劣化によって硬化し、ヒビ割れが生じています。この状態から、さらに引っ張られたり圧縮されたりするので、その結果として亀裂が入って水漏れ、破損につながるわけです。一方で、シリコーン素材は、ヒビ割れすら確認できない。つまり、初期状態の柔軟性を保っている。この柔軟性・追従性がシーリング材には最も重要なことなんです」

参考
10,000時間の
キセノン耐候性試験結果

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※SE 980 Aカタログより抜粋

ブース内には各製品のサンプルが展示されており、両手に持って伸ばすことで説明された通りの伸縮性・追従性の高さを確認できました。また、ミニチュアのコーキングガンも用意されており、施工デモも体験できるなど充実。ブースを訪問したイベント参加者は、その性能の高さを自身で触れて確かめるとともに、担当者の説明にも熱心に聞き入っていました。

インフラ土木業界での認知度の低さの理由

国内の建築業界で圧倒的シェアを誇るシリコーンシーリング材。しかしながら、今回の展示会のターゲットでもある国内のインフラ土木業界での導入実績は多いとは言えない。その背景には「日本語名称のわかりにくさ」があると伊藤さんは指摘します。

「一般的な土木業界向けシーリング材の素材『変成シリコーン』、そして私どもの取り扱う『シリコーン』は、名前は似ていますが全く違うものなのです。化学的には炭素系と非炭素系。耐久性・耐候性という指標ではシリコーンのほうが圧倒的に上。しかし『変成』という名前のイメージから、日本国内では『シリコーンよりも変成シリコーンのほうが高性能なのでは?』という間違った認識を持たれる方が多くいらっしゃるのも現実なのです。日本語ならではの誤解を招きやすい表現ですよね」

加えて「なかなか正しい情報が共有されない」そんなもどかしさを感じているそうです。

「建築業界では変成シリコーンやポリウレタン、そしてシリコーンなど、用途によって素材の使い分けがされています。しかしインフラ土木業界には、なぜかそれが少ないように思います。変成シリコーンとポリウレタンでも、それぞれに一長一短あるのですが、その情報も共有されないまま業界が動いてしまっているように思えます。もちろんメーカーとしても、インフラ土木業界でシリコーンの良さが認知されていないという点では、大いに反省すべき課題だと認識しています。それは他のメーカーさんも同様で、いま皆で頑張って認知訴求や提案をしている。シリコーン製品にとっていい方向に向かっていると思います」

シリコーンの素晴らしさを直接伝えたい

土木業界に対してシリコーン素材の認知を広げる理由は、環境問題。持続可能な社会を作っていくうえでも「シリコーンが担う役割は大きい」と教えてくれました。

「インフラ老朽化の報道を目にする機会が日に日に増えてきました。繰り返しになりますが、まずは土木関係者の皆さまに、高耐久のシーリング材が存在するということを知ってもらいたいです。その特長や施工技術などの正しい知識を共有し、ふんだんに使っていただきたい。そうすることで、結果的に環境問題への自発的な取り組みが進んでいく。メンテナンスフリーのシリコーンシーリング材採用が、補修サイクルの削減をもたらし、ひいては廃材削減などを通じてCO2排出量削減につながる。そのような形で、土木業界の環境問題への取り組みを後押しできると考えています」

今後シリコーンシーリング材の性能の高さ、施工のしやすさがもっと広く認知されれば、インフラ保全の考え方が根本から変わっていくかもしれない。そんな可能性を感じることができました。後編では、ハイウェイテクノフェア出展の目的、シリコーンシーリング材の販売戦略についてレポートをお届けます。

®™:ザ・ダウ・ケミカル・カンパニーまたはその関連会社の商標
DOW TORAYの商標のTORAYの部分は、使用許諾のもとで使用している東レ株式会社の商標です。

PROFILE
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伊藤 秀樹 様
ダウ・東レ株式会社
マーケティング部 マーケティングマネジャー(北アジアエリア担当)。2022年中途入社。
前職では、大手化学メーカーにて、主に建設市場や工業用製品市場を中心に、営業やマーケティングに従事。最大手EC企業での経験を経てダウ・東レに入社。
現在、事業開発とマーケティングを兼務しながら、同社シリコーンシーリング材の事業拡大に尽力中。

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